平成24年度より、中学校においてダンスの授業が必修となりました。
しかし、指導する教員からは指導について不安の声が上がっています。
白桃プロジェクトは、そういった教員の方々の声を受けめ、教育現場でダンスを安全かつ円滑に実施できるよう、教員び視点から生み出された取組です。
白桃プロジェクトがて少しでも教育現場の活性化とこども達の育成のお力になれば幸いです。
スポーツ教育センター
許 南浩 理事(スポーツ教育センター長)
白桃ダンスは学校の現場を支援するために開発された、岡山大学発の支援教材です。平成24年度の中学校におけるダンスの男女必修化を受けて、小・中学校でダンスが行われるようになりました。しかしその一方で、ダンスの指導に困難を感じる教員も多いと聞いております。
白桃ダンスのDVDは生徒と教員の双方が見ながら学べるように工夫されています。ぜひ、楽しみながら、ダンス教育に活かして下さればと思います。
白桃プロジェクト代表
教育学研究科准教授 酒向治子
白桃プロジェクトには、音楽、デザイン、ダンスなど様々なクリエイターが関わっています。その作業は妥協のない、高いクオリティーのエネルギーに満ちたものでした。プロジェクトに関わった全てのクリエイター推進に力を貸してくださった岡山大学スポーツセンター長の鈴木久雄先生、岡山大学ダンス部および岡山大学教育学部保健体育講座の方々に、この場を借りてお礼を申し上げます。「白桃ダンス」が学校のみならず、行事やイベント等さまざまな実践の場において、岡山発のコンテンツとしてご活用いただけることを願っております。
近年テレビ等のメディアでストリート系のダンスを目にする機会が増え、幼少期を含めた様々な世代におけるダンス人口が急増しています。それに伴い平成24年度から中学校の体育科目においてダンスが必修となりました。
その一方で、現場の先生方からの戸惑いの声も聞かれます。「使用する音楽」「基本的な動き」 等についての質問が、特に多く寄せられました。
そこから教育現場の先生方を支援する教材の必要性を感じ、新しいダンスプログラム(「白桃ダンス」を用いた支援教材)「白桃プロジェクト」が、生み出されました。
学校現場において、ダンス種目の中でも特に生徒の身近なリズムで踊るリズム系ダンスに対する注目は高い傾向にあります。その一方で、映像教材を用いた振り移し授業の増加など、既存の振り付けの動きの習得・模倣学習に終始し、本来あるべき探究を核とする課題解決型の学習からかけ離れている教育現場の実態も指摘されています。メディアの影響により、子どもたちも「ダンス」というとヒップホップなどの振り付けを習得することをイメージする傾向にあり、「かっこよく振り付けを踊ってみたい」という要望も高まっているように感じられます。白桃ダンスプロジェクトでは、探究型の学習を目指しつつ、振り付けを踊りこなした時の高揚感や楽しさも同時に味わえるようなダンスプログラムになるように工夫しました。
岡山の代表的な特産物の白桃から産まれた「白桃ダンス」のイメージ・キャラクターです。桃の頭を持ち、得意のダンスを踊ります。
二つのダンスプログラムでは、A<既存の振り付けを踊る楽しさ>とB<動きを工夫する探究の楽しさ>のAB両方が味わえるように以下のアプローチをとりました。
音楽の最も印象に残る部分に振り付けた「サビ」は、「白桃ロック」には3回、「White Peach Rap」には5回と多く繰り返されます。<既存の振り付けを踊る楽しさ>を体感したあとに、内容としてグループ学習等で「自分たちオリジナルなフレーズやサビ」を創るなど、「振りを真似る」ダンスから「振りを自ら考える」発展的学習へと進んでいただけたらと思います。なお、本ダンスプログラムで例示した動きはあくまで一つの例ですので、学習者の発達段階によって、必要に応じて先生が自由に変えて下さい。
「白桃ロック」と「White Peach Rap」は白桃のダンスキャラクター「はくとん」をイメージした音楽となっています。イメージを土台として子どもたちオリジナルな動きを引き出すようにして下さい。
「白桃ダンス」プログラムは、動きの研究でルドルフ・ラバンの身体運動に基づくLODの要素を採り入れています。
LOD=Language of Danceは、ルドルフ・ラバンの身体理論に基づき、人間の身体の動きを言語ととらえて記号化し、最も根幹的な要素を動詞(主要な16種類の動作)・副詞(動作の質)・名詞(身体部位)等に分類・体系化された、世界で最も普及している動きの言語による舞踊記述法である。言語として動きを系統的に学び、「読む・書く・表現する」能力を養う身体表現教育法として近年欧米を中心に注目を集めている。1990年代後半から欧米を中心に注目を集めてきた。LODのテキストYour Move-A New Approach to the Study of Movement and Dance-(1983年出版、2008年改訂版出版。日本語の翻訳本が2015年3月に大修館書店より刊行予定)
岡山県内の音楽の専門家とタッグを組み、乗りやすいリズムとテンポの「ダンスのための音楽」を考案しました。ロックとヒップホップの二つが用意されています。「白桃ロック」は<エネルギッシュ>、かつ一気に踊りきれるような<スピード感>を、「White Peach Rap」は「白桃」の魅力を訴えかける躍動感あふれるリリックを特徴として創られました。
二つのダンスプログラムでは、A<既存の振り付けを踊る楽しさ>とB<動きを工夫する探究の楽しさ>のAB両方が味わえるように以下のアプローチをとりました。
音のリズムに「合わせて」正しく踊ろうとするのではなく、音のリズムに「乗って」、たとえ動作を間違えたとしても間違えたこと自体を楽しめるような雰囲気を重視し、「ノリ」を大切にして踊ってください。ダンスが楽しいものであるということを体感してもらうことがまずは大事です。生徒達を一緒に楽しんで授業を行ってください。
白桃ロックは、音楽に合わせて手拍子、歩く、走るなどシンプルな動作によって構成され、仲間とのコニュニケーションをとりながら、踊れるように作られています。
「サビ」と呼ばれる踊りの定型セクションA、自由に工夫の出来るセクションBが繰り返し出てきます。
まずは、曲中に3度出てくるセクションAの振り付け(左図)を覚えるよう指導します。DVDのダンス映像を参考にして、実際に体を動かしながら覚えます。
このプログラムでは、リズム系ダンスで重視する「全身で弾むこと」を具体的に学習出来るよう、「5つの足型」という基本的なLODの理論を用います。
LOD※では「踏切と着地の組み合わせによって、人間の弾み方(跳び方)は全部で5つ(右表)と考えており、この5つの足型を様々に組み合わせることによって、全身で弾むダンスが簡単に構成できるようになりましょう。
前奏ではパートナーを組んで回転する動きを加えます。間奏Aではパートナーをチェンジします。
間奏Bでは走る、跳ぶ、転がるなどのシンプルな動作を用いて、空間・場を変化させます。エネルギーを出し切って行うように指導してください。指導者の指示で動くパート、生徒が自由に動くパートを作り、メリハリを付けるとよいでしょう。
指導の流れがつかめるように、指導風景を映像化しています。通しの映像は、youtubeの動画(20:24~)から見ることができます。
以下のセクションから成ります。
セクションAは5回繰り返します。慣れて来たら、「自分たちのサビ」を創り、踊ってみてください。
セクションB(フリーダムタイム)は即興の動きで掛け合いを行うセクションです。DVDに例ではペアを組んでダンスバトルを行います。
セクションBの音楽には「手をたたけ」など動きの合図になるようなセリフが多く含まれています。指導の際はこの歌詞(セリフ)を意識して指導してください。
指導の流れがつかめるように、指導風景を映像化しています。通しの映像は、youtubeの動画(21:39~)から見ることができます。
以下のセクションから成ります。
ダンスプログラム構成 | 酒向 治子 |
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ダンス振付 | 酒向 治子 / 大西 唯香 |
出演者 | 大西 唯香 / 岡山大学ダンス部 |
作詞・歌唱 | kikyow / マンダイアキノリ / 藤原 和也 / 酒向 治子 |
作曲・編曲 | 大上 祥平(Kanata Labo) / エダタツキ |
映像制作・編集・撮影 | 進 巧一(びより) / アンドレ・モンテイロ |
ミックス・マスタリング | Studio IMAGE |
編集デザイン | 萩原 昌子 |
キャラクターデザイン | 今井 静香 / 酒向 治子 / 萩原 昌子 / 瀨 戸本 勉 |
助成 | 平成26年度大学機能強化戦略経費 / 日本学術振興会科学研究費補助金(24700623) |
監修 | 酒向 治子(岡山大学大学院 教育学研究科) / 鈴木 久雄(岡山大学 スポーツ教育センター) |
スペシャルサンクス | コカ・コーラウエスト株式会社 / 岡山大学 教育学部保険体育講座 |